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文献詳細

雑誌文献

臨床検査36巻12号

1992年11月発行

文献概要

TOPICS

細胞内酵素と自己免疫疾患

著者: 網野信行1 中野卓1

所属機関: 1大阪大学臨床検査診断学・中央臨床検査部

ページ範囲:P.1259 - P.1260

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 検査分野における血中酵素測定は,従来から逸脱酵素として組織障害のよい標識とされている.各種酵素活性測定による肝機能検査がその代表的な例である.これらの酵素に対して血中に自己抗体が存在する場合,当該組織に組織障害がないにもかかわらず,酵素活性の異常高値が出るため,検査診断学的に注意しなければならない.しかし,実際臨床でこのような異常として同定されることは比較的まれである.おそらく自己抗体が存在していてもその抗体価が低いため,日常診察ではそのほとんどが見逃されているのかもしれない.また酵素の活性反応基に対応するエピトープを認識する自己抗体では,抗体があると活性が低値を示し,おそらく見逃されてしまっているのかもしれない.
 上記とは逆に,最近細胞内の一部の酵素が,対応臓器の自己免疫疾患診断のための主要自己抗原となることが注目されつつある.その代表的存在は自己免疫性甲状腺疾患における甲状腺ペルオキシダーゼである.従来,甲状腺ミクロゾーム抗原として,わが国で開発された赤血球凝集反応を用いてその抗体を測定し,橋本病,バセドウ病の診断に用いられていたものであるが1),甲状腺ミクロゾーム抗原そのものが甲状腺ペルオキシダーゼであることが判明した2).この甲状腺ペルオキシダーゼに対する自己抗体は驚くべきことに成人女性の約10%に認められ,細胞内酵素に対する自己抗体の存在が,いかに高頻度にあるかが明確にされた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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