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文献詳細

雑誌文献

臨床検査36巻3号

1992年03月発行

文献概要

トピックス

ロタウイルスと院内感染

著者: 中田修二1 千葉峻三1

所属機関: 1札幌医科大学小児科学教室

ページ範囲:P.306 - P.308

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 ロタウイルスは動物の胃腸炎ウイルスとして発見され,ヒトにおいては1972年に胃腸炎患児の下痢便中または生検十二指腸粘膜から検出された1).ウイルス学的性状は,直径が約70nmで核酸として11本の分節型二本鎖RNAを持ち,core,内殻蛋白,外殼蛋白の3層の構成蛋白から成っている.11本のRNAがおのおのmonocistronicに1個の蛋白をcodeしている1~3).VP6と呼ばれる内殼蛋白により群特異抗原と亜群が規定され,ロタウイルスはA群からG群に,さらにA群においては亜群IとIIに分類されている.一般的にロタウイルスといえばA群を指す.VP4,VP7と呼ばれる2種類の中和に関与する外殼蛋白により血清型が規定され,A群では1型から12型まで分類され,ヒトにおいては1,2,3,4型の主要血清型と他に8,9,12型が知られている.SDS-PAGEによる核酸分析では泳動パターンに多様性がみられ,その比較により株の判別が容易に行われる.
 これまでの研究から,ロタウイルスが世界的にヒトの胃腸炎のもっとも重要な病原ウイルスの1つであることが判明している.感染力は非常に強く,感受性者である乳幼児の間で容易に伝播し,日本においては毎年主として冬季に流行する.小児科病棟内でも同様に冬季になると胃腸炎の流行がみられ,種々の基礎疾患を持って入院している病児が罹患すると症状を増悪させたり,重篤な病態を惹起したり,持続感染を起こして長期間感染源になるなどいろいろな問題を引き起こす4).近年ロタウイルス胃腸炎の迅速診断法が開発され,さらに検出されたウイルスの亜群,血清型や核酸パターンの解析が可能となったため,ロタウイルスによる病棟内感染の実態に関するより詳細な分析が可能となった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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