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文献詳細

雑誌文献

臨床検査36巻4号

1992年04月発行

文献概要

今月の主題 血管内皮細胞 話題

血管内皮細胞と血液凝固―特にリポ蛋白質結合性プロテアーゼインヒビターについて

著者: 加藤久雄1

所属機関: 1国立循環器病センター研究所病因部

ページ範囲:P.391 - P.393

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1.はじめに
 血管内皮細胞と血液凝固との関係については,人工血管や体外循環装置など医用高分子材料を生体に用いた場合を考えると,容易に想像できる.これらの人工材料が血液と接触すると,白血球や血小板が吸着するとともに,血漿の凝固系プロテアーゼが活性化され,血栓の形成やキニンの遊離など生体にとって不都合な反応が起こることになる.血管内皮細胞は種々の機構からなる抗血栓性機能をもち,血液の流動性を維持する一方,傷害を受けた場合には,速やかに血栓を形成して傷害部位を保護する血栓性機能をもっている.このような相反する機能をもつ内皮細胞により,血液の恒常性が維持されており,そのバランスが動脈硬化などにより崩れると,心筋梗塞や脳梗塞など種々の循環器疾患が引き起こされると考えられる.内皮細胞の抗血栓性については,従来から,細胞表面に存在するアンチトロンビンIIIやトロンボモジュリンによる抗凝固作用や,PGI2の産生による抗血小板作用,t-PAの産生やプラスミノーゲンの結合による線溶促進活性などがよく知られている.ここ数年,抗凝固活性をもつ新しいタイプのィンヒビターが内皮細胞で産生されることが,明らかとなり注目されるようになった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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