文献詳細
文献概要
今月の主題 血管内皮細胞 話題
人工血管と内皮細胞
著者: 松本博志1
所属機関: 1東京大学先端科学技術研究センター界面機能材料分野
ページ範囲:P.398 - P.399
文献購入ページに移動1.はじめに
今日の血管外科学の進歩をもたらしたのは代用血管,中でも人工血管の開発である.血管の拡張ないしは狭窄病変を血管の代用物で置換しようとする目的では,ヒトないし動物の血管が使用され,現在も使用しようとする研究がある.しかし,これまでの処理(加工)方法ではその長期成績は満足のできるものではなかったという歴史がある.一方で人工材料で血管の代用物を作製しようとする研究が行われ,1953年に合成高分子材料を利用した血管代用物による腹部大動脈瘤摘除置換手術に成功した.これは人工血管の最初の臨床使用成功例である.そして,人工血管による血行再建が大動脈を中心とした拡張病変に対する置換手術から,血行障害部位を迂回して血行再建するバイパス手術(bypass grafting)の外科手技としての着想が今日の血管外科の発展をもたらしたと同時に,より長期間の開存性の得られる小口径人工血管の開発を求める主要因でもある.
一般に移植された人工血管の内腔表面には内皮細胞の増殖を認めない偽内膜と言われる部分と,内皮細胞の増殖を認める新生内膜と言われる部分とが混在するのが通常の病理所見である.偽内膜の部分は移植人工血管の縫合部を越えて約1cm位離れた部分から中央部分にかけての通常所見であり,新生内膜の部分は縫合線を越えて約1cm位までの部分の通常所見である.
今日の血管外科学の進歩をもたらしたのは代用血管,中でも人工血管の開発である.血管の拡張ないしは狭窄病変を血管の代用物で置換しようとする目的では,ヒトないし動物の血管が使用され,現在も使用しようとする研究がある.しかし,これまでの処理(加工)方法ではその長期成績は満足のできるものではなかったという歴史がある.一方で人工材料で血管の代用物を作製しようとする研究が行われ,1953年に合成高分子材料を利用した血管代用物による腹部大動脈瘤摘除置換手術に成功した.これは人工血管の最初の臨床使用成功例である.そして,人工血管による血行再建が大動脈を中心とした拡張病変に対する置換手術から,血行障害部位を迂回して血行再建するバイパス手術(bypass grafting)の外科手技としての着想が今日の血管外科の発展をもたらしたと同時に,より長期間の開存性の得られる小口径人工血管の開発を求める主要因でもある.
一般に移植された人工血管の内腔表面には内皮細胞の増殖を認めない偽内膜と言われる部分と,内皮細胞の増殖を認める新生内膜と言われる部分とが混在するのが通常の病理所見である.偽内膜の部分は移植人工血管の縫合部を越えて約1cm位離れた部分から中央部分にかけての通常所見であり,新生内膜の部分は縫合線を越えて約1cm位までの部分の通常所見である.
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