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文献詳細

雑誌文献

臨床検査36巻4号

1992年04月発行

文献概要

TOPICS

invasin

著者: 飯田哲也1 本田武司1

所属機関: 1大阪大学微生物病研究所

ページ範囲:P.422 - P.423

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 赤痢菌,サルモネラ菌など病原細菌のあるものは,感染,発症の過程において宿主細胞内に侵入する.この細菌による細胞内侵入の機構には一般に遺伝子レベルで協調的に発現調節される多数の因子が関与しており,大部分の侵入性細菌についてその全容はいまだ明らかでない.それらの中においてYersinia属菌の外膜蛋白であるinvasinに関する近年の一連の研究1,2)は,細胞侵入に関与する細菌側および宿主細胞側の両方の因子を分子レベルで明らかにした例であり,他の病原微生物の細胞侵入性の研究に1つの指針を与えると考えられる.
 invasinは,齧歯類(まれにヒト)に経口的に腸管感染し結核様病変を起こすYersinia Pseudotuberculosisから見いだされた103kDaの外膜蛋白質である3).細胞侵入性を持たない大腸菌K12株をinvasinをコードする遺伝子(inv遺伝子)で形質転換すると,この大腸菌は培養細胞に対して侵入性を示すようになる4).つまりinvasinは,それのみで非侵入性の大腸菌に侵入性を付与するのに十分な機能を有していると言える.細菌の細胞内侵入という複雑にみえる現象が1つの遺伝子産物で説明できるというのは驚くべきことである.現在までにinvasinはY. Pseudotuberculosisのほかにヒト腸管病原菌であるY. enterocoliticaからも見いだされている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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