トピックス
皮下埋め込み型グルコースセンサー
著者:
牧野英一1
田代亜彦2
清水義浩3
所属機関:
1千葉大学第二内科
2千葉大学第一外科
3(株)東レ基礎研究所
ページ範囲:P.529 - P.529
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糖尿病の慢性合併症を予防するためには厳格な血糖コントロールが必要である.しかし,インスリン依存型糖尿病は血糖値の変動が著しくその血糖コントロールは不可能に近い.そこで膵移植や人工膵臓の開発が急務であるが,わが国では膵移植は脳死問題が未解決のため実施には程遠い.そこでわれわれは人工膵臓の開発を計画したがそのキーポイントは長期間使用可能な埋め込み型グルコースセンサーにある.現在までに針状の過酸化水素型グルコースセンサーが開発され,ヒトやイヌの皮下組織中のグルコース濃度が測定されたが,まだ実用化はされていない1).その最大の理由は皮下組織中の酸素濃度が低いためセンサーに利用されている固定化酵素であるglucose oxidase(GOD)の反応が制限されるためである.1984年Cassら2)によって酸素を必要としないメディエーター型グルコースセンサーが開発された.この原理は図1に示すとおりGODの酸化体(ox)がグルコースを酸化し,その際生じる電子(e―)がメディエーターが通じて電極に伝わるというものである.すでにこの原理を利用したセンサーが血糖自己測定用に市販されている.また,埋め込み型センサーも試作されているが,まだ不十分である3).一方,清水らは新しい原理に基づくミクロホール電極を用いた過酸化水素型グルコースセンサーの作製に成功した4).