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サルモネラの宿主特異的病原機構
著者: 石橋芳雄1
所属機関: 1明治薬科大学微生物学
ページ範囲:P.530 - P.531
文献購入ページに移動 サルモネラは,分類学上,そのDNA相同性からすべてSalmonella choleraesuis一属一菌種に属しており,単に血清型で分類されているにすぎない.このような高いDNA相同性を示すにもかかわらず,その病原性には菌の血清型と宿主動物種との間に特異性があり,S. typhi,S. paramphi Aはヒトに対しては重篤な全身性感染症(チフス症)を引き起こすが,マウスに対しては起病性がなく,逆に,S. typhimurium,S. enteritidisはマウスに敗血症を引き起こすが,ヒトに対しては局所性の急性腸炎を起こすにすぎない.このような病原性は主に,宿主マクロファージの殺菌作用に対する抵抗性によってもたらされるが1,2),宿主特異性を発現するには,各血清型のサルモネラと,ヒトやマウスなど異なる動物種マクロファージとの間で,特別な識別機構が働いている可能性が考えられる.
ヒトおよびマウスマクロファージは主に補体レセプターを介してサルモネラを認識しているが3),補体レセプターはCR1からCR3まで3種類あることが知られており,それぞれ異なった代謝段階の補体成分に親和性を持っている(表1).マクロファージはこの中で,CR1とCR3の2種類の補体レセプターを持っている.ヒトのCR1は単一ペプチドでできており,C3bとC4bに強く結合し,C3biにも1/10程度の結合力を持つ4).また,マウスのCR1はさらに,C3d結合部位を持っている.一方,CR3はC3biと特異的に結合するレセプターで,構造的にはCR1とまったく異なっており,分子量165kDaのα鎖と95kDaのβ鎖が非共有結合した二量体である4).また,CR3はリンパ球に存在するLFA-1(CD11a/CD18),および食細胞に存在し,CR4とも呼ばれるp150.95(CD11c/CD18)の2つの接着レセプターと相同性があり,1つのfamilyを形成している.これら3つの蛋白はβ鎖が共通でα鎖にも互いに相同性がある5).このfamilyはさらに,血小板のgp II b/III a,フィプロネクチンレセプター,ピトロネクチンレセプターなどを含むintegrinsuperfamilyに属する6).
ヒトおよびマウスマクロファージは主に補体レセプターを介してサルモネラを認識しているが3),補体レセプターはCR1からCR3まで3種類あることが知られており,それぞれ異なった代謝段階の補体成分に親和性を持っている(表1).マクロファージはこの中で,CR1とCR3の2種類の補体レセプターを持っている.ヒトのCR1は単一ペプチドでできており,C3bとC4bに強く結合し,C3biにも1/10程度の結合力を持つ4).また,マウスのCR1はさらに,C3d結合部位を持っている.一方,CR3はC3biと特異的に結合するレセプターで,構造的にはCR1とまったく異なっており,分子量165kDaのα鎖と95kDaのβ鎖が非共有結合した二量体である4).また,CR3はリンパ球に存在するLFA-1(CD11a/CD18),および食細胞に存在し,CR4とも呼ばれるp150.95(CD11c/CD18)の2つの接着レセプターと相同性があり,1つのfamilyを形成している.これら3つの蛋白はβ鎖が共通でα鎖にも互いに相同性がある5).このfamilyはさらに,血小板のgp II b/III a,フィプロネクチンレセプター,ピトロネクチンレセプターなどを含むintegrinsuperfamilyに属する6).
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