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タウプロテインキナーゼⅠ(TPKⅠ)
著者: 石黒幸一1 内田庸子1
所属機関: 1三菱化成生命科学研究所
ページ範囲:P.664 - P.664
文献購入ページに移動PHFのタウの特徴の1つはタウ分子のC末端部位(p2部位)のリン酸化である.ウサギの抗PHF抗血清にp2部位のリン酸化を認識する抗体が含まれていた1).私たちは,この抗体で認識されるリン酸化を指標として,プロテインキナーゼを検索し,このようなリン酸化をするキナーゼがウシ脳の微小管に結合していることを発見した2).部分精製の段階でこのキナーゼがタウに結合でき,タウをかなり特異的にリン酸化したので,タウプロテインキナーゼ(EC2.7.1.135)と命名した.精製が進むと,タウをリン酸化する活性は2つに分かれたので,p2部位をリン酸化するキナーゼをタウプロテインキナーゼⅠ(TPK Ⅰ),もう1つのキナーゼをタウプロテインキナーゼⅡ(TPK Ⅱ)として区別した.タウをリン酸化するプロテインキナーゼはいろいろ知られているが,調べた限りではTPK Iだけがタウのp2部位をリン酸化した3).TPK Iの最終精製標品にはSDSーポリアクリルアミド電気泳動(SDSおPAGE)で分子量45,000の蛋白だけが含まれ,この蛋白の部分アミノ酸配列にプロテインキナ~ゼの共通配列を見いだし,この蛋白がキナーゼの本体であることを確認した.このキナーゼはタウのセリン/スレオニン残基をリン酸化し,セカンドメッセンジャーで活性化されず微小管の主成分チューブリンで活性化された.TPK Iはヒトの脳でも検出された. PHFのリン酸化タウにはp2部位のリン酸化のほかにも特徴がある.正常なタウに対して作製したモノクm一ナル抗体tau-1はタウ分子の中央部位(tau-1部位)に結合するが, PHFはこの部位にリン酸基を取り込んでいるのでこの抗原性を失っている4}.TPK Iでリン酸化されたタウもtau-1抗体と反応せず,tau-1部位でもリン酸化されていることを確認できた3).
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