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文献詳細

雑誌文献

臨床検査36巻6号

1992年06月発行

文献概要

海外だより

アメリカ合衆国―医療従事者とHIV感染

著者: 長尾正崇1 長尾早江子2

所属機関: 1東京大学医学部法医学講座 2呉みどりケ丘病院内科

ページ範囲:P.669 - P.669

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 筆者らは湾岸戦争最中の1991年1月から1992年2月までニューヨークで留学生活を送る機会を得た.マンハッタンでは街を歩くと「自分はAIDSに蝕まれている」とポスターを掲げて通行人に施しを求めるホームレスの姿が目につき,宿舎の掲示板ではAIDSに罹患した子供たちの遊び相手のボランティアを募集するポスターの掲示がみられるなど,ウイルス学や血液内科学にうとい筆者らにとってもAIDSに関して無関心ではいられなかった.Centers for Disease Control(CDC)の報告によると米国におけるAIDS患者数は1990年において101,000人から122,000人であり,1993年には151,000人から225,000人になると推定されている1).従って一般の関心も高く,マスメディアもAIDSに関するニュースを数多く取り上げている.それらの中で医療従事者からのhuman immunodeficiency virus(HIV)の伝染という非常にショッキングなMs. Kimberly Bergalisのケースを例にとり,医療従事者のHIV感染について患者側と医療従事者側の主張を紹介する.
 Ms. Bergalisは歯の治療中に,HIV感染者であった歯科医から伝染しAIDSに罹患した.彼女はアメリカ上院の公聴会で全医療従事者のHIV検査を義務付ける法的措置の設置を求めた.これに対し医療従事者側は検査によりHIVの感染が判明した場合に職を失うことを恐れて反発している.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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