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アミノ酸配列の新分析法
著者: 次田晧1
所属機関: 1東京理科大学生命科学研究所
ページ範囲:P.779 - P.781
文献購入ページに移動 1.はじめに
蛋白質のアミノ(N)末端の配列は1960年代にEdmanによって提出され,1980年半ばに自動分析装置が完成し,約50pmol/lの蛋白質で平均20残基が,1時間約2残基のスピードで分析できるようになってきた.それに引きかえ蛋白質のもうひとつの末端,カルボキシル(C)末端の配列分析には満足のいく方法が確立しているとは言えない.C末端アミノ酸の分析には赤堀らによるヒドラジン分解法,松尾のトリチウム標識法などわが国の貢献が大きい.一方C末端配列分析の中心はカルボキシペプチダーゼが唯一の方法で,化学的な段階的分解法も提案されているが実用化には至っていない.カルボキシペプチダーゼにはA,B,Y,Pと4種類の特異性の異なるものが市販されているが,特異性のため,また混在するエンドプロテアーゼなどのため,実際の実験では十分とは言えない.
われわれは数年前,蛋白質の加水分解に従来用いている塩酸にトリフロロ酢酸(TFA)を加えると分解が加速されることを見いだした1,2).この原因を研究しているうちにTFAなどの酸が蛋白質のC末端から逐次分解を行う特性を見いだした3).この逐次分解がC末端アミノ酸の脱水した分子,オキサゾロンを通過しているらしいことを観察し,もしそうならオキサゾロンをより作りやすい化合物,酸無水物を用いたほうがよいと考えた.それが,ここで紹介する新しいC末端逐次分解法である.
蛋白質のアミノ(N)末端の配列は1960年代にEdmanによって提出され,1980年半ばに自動分析装置が完成し,約50pmol/lの蛋白質で平均20残基が,1時間約2残基のスピードで分析できるようになってきた.それに引きかえ蛋白質のもうひとつの末端,カルボキシル(C)末端の配列分析には満足のいく方法が確立しているとは言えない.C末端アミノ酸の分析には赤堀らによるヒドラジン分解法,松尾のトリチウム標識法などわが国の貢献が大きい.一方C末端配列分析の中心はカルボキシペプチダーゼが唯一の方法で,化学的な段階的分解法も提案されているが実用化には至っていない.カルボキシペプチダーゼにはA,B,Y,Pと4種類の特異性の異なるものが市販されているが,特異性のため,また混在するエンドプロテアーゼなどのため,実際の実験では十分とは言えない.
われわれは数年前,蛋白質の加水分解に従来用いている塩酸にトリフロロ酢酸(TFA)を加えると分解が加速されることを見いだした1,2).この原因を研究しているうちにTFAなどの酸が蛋白質のC末端から逐次分解を行う特性を見いだした3).この逐次分解がC末端アミノ酸の脱水した分子,オキサゾロンを通過しているらしいことを観察し,もしそうならオキサゾロンをより作りやすい化合物,酸無水物を用いたほうがよいと考えた.それが,ここで紹介する新しいC末端逐次分解法である.
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