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文献詳細

雑誌文献

臨床検査36巻9号

1992年09月発行

文献概要

トッピクス

イムノトキシン:毒素の治療への応用

著者: 本田武司1

所属機関: 1大阪大学微生物病研究所

ページ範囲:P.1028 - P.1029

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 最近,植物や微生物の産生する"生物トキシン"の構造や作用機序に関する知見が蓄積し,これらのトキシン(毒素)を疾病の予防や診断・治療へ応用する可能性についての研究が盛んに行われている1).多数知られている生物トキシンのうちでも,リシン,ジフテリア毒素,緑膿菌外毒素などの蛋白合成阻害性毒素は強力で,1ないし数分子の細胞内移入により細胞を死滅させる.
 これらの毒素はA-Bモデル構造を有しており,標的細胞上のレセプターに結合(binding;B)するサブユニット(あるいはドメイン)と,毒素作用(active;A)を発揮するAサブユニット(ドメイン)から成っている.毒素そのものを用いると生体にとっては不都合な毒作用を発揮してしまうが,B部分を癌細胞などの標的細胞に特異的に反応するモノクローナル抗体(MAb)などに置き換え,これを担体としてAサブユニットを望む標的細胞に特異的に移入させると,目的とする細胞を特異的に死滅させることができる.このようにMAbを担体とした生物トキシン(のAサブユニット)を組給わせたものがimmuno-toxin (IT)である2).したがって,ITはdrug delivery systemの1つで,そのしくみの類似性からミサイル療法とも言われる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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