icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床検査37巻12号

1993年11月発行

文献概要

今月の主題 血液疾患をめぐる新しい検査 話題

急性前骨髄球性白血病のATRA療法とDIC

著者: 川合陽子1

所属機関: 1慶應義塾大学病院中央臨床検査部

ページ範囲:P.1242 - P.1244

文献購入ページに移動
1.はじめに
 急性前骨髄球性白血病(acute promyelocyticleukemia;APL)は急性白血病の中でも特異な白血病として知られている.形態的にファゴットや荒いアズール顆粒を有する特徴的な白血病細胞を呈するとともに,汎血管内凝固症(disseminatedintravascular coagulation;DIC)を合併する.APL細胞が破壊されると細胞中の凝固活性物質が遊離し,DICを起こすと言われているが,近年線溶活性物質や蛋白分解酵素の遊離が出血傾向の助長に関与すると考えられるようになった.APL患者は寛解導入治療中に9~40%の頻度で出血死すると報告されており,治療の成功の鍵はDICのコントロールであるとも言われてきた.近年,血小板や血漿の補充療法が普及するとともに,抗凝固療法などDICの治療の進歩により致死率は低下した.しかし,出血傾向の強いDICにおける抗凝固療法の必要性には異論を唱える報告もある.
 total cell kill theoryに基づいた強力な多剤併用化学療法の進歩によりAPLの寛解率は70~80%となったが,20~30%の患者は初回寛解導入療法中に出血か敗血症で死亡する.1988年オールトランス型レチノイン酸(all-trans retinoicacid;ATRA)がAPL細胞を分化誘導し成熟好中球に導き,寛解導入が可能であると中国から報告された.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?