icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床検査37巻7号

1993年07月発行

文献概要

今月の主題 粘膜免疫と臨床検査 巻頭言

粘膜の免疫防御機構

著者: 河合忠1

所属機関: 1自治医科大学臨床病理学

ページ範囲:P.711 - P.712

文献購入ページに移動
 ヒトの体の内部環境は外部環境から隔絶されているために,無数の微生物や異物の侵入から守られている.その両者を隔絶しているのは皮膚と粘膜である.皮膚は厚く何層もの扁平上皮細胞が密に並び,あらゆる異物の侵入を物理的に許さない.それに反して,粘膜は体の内部にあっても直接外界と接触しているが,組織としては軟らかく微生物や異物の侵入が容易である.そのために,粘膜には皮膚にはない特殊な防御機構が備わっている.すなわち,多量の粘液で表面が覆われており,粘膜組織には免疫細胞が浸潤している.
 粘液は多量の多糖体を含んで粘着性に富み,あらゆる異物を直ちに捕捉する働きがある.最も異物の侵入が容易な呼吸器系粘膜細胞には繊毛があって,粘着された異物を物理的に外界に運び出す働きさえ備えている.粘液にはさまざまな非特異的液性因子が含まれていて,殺菌作用をもっており,粘膜組織から遊走した白血球,特に食細胞群が外界からの微生物や異物の侵入を防いでいる.今日では,粘液中に炎症に関連した多くの液性因子,例えばキニン,プロスタグランジンなどの存在が指摘されている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?