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文献詳細

雑誌文献

臨床検査38巻1号

1994年01月発行

文献概要

トピックス

アルコール性肝障害と遺伝子

著者: 田中文華1 小俣政男2 塚田悦男3

所属機関: 1千葉大学医学部第一内科 2東京大学医学部第二内科 3長汐病院

ページ範囲:P.101 - P.103

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 酒屋の前を通っただけで酔っぱらってしまうとか,斗酒なお辞さぬと平然としていられる,あるいは量は飲めても酒に呑まれてしまうというように,酒に対する感受性が個々の人々によって異なることが昔から経験的に知られている.最近の分子生物学的研究により,遺伝子がこれらの現象の一部を規定し,ひいては,肝障害進展への一要因となっていることが明らかにされつつある.以下に,われわれの研究室で明らかとなった最新の知見を述べたい.
 経口摂取されたエチルアルコール含有飲料(以下アルコール)はアルコール脱水素酵素(ADH)により酸化され,有毒のアセトアルデヒドになる.この有毒物質はさらにアルデヒド脱水素酵素(ALDH)により代謝されて酢酸となり,次いで,水と二酸化炭素にまで分解されて体外に排出される.なお,過剰のアルコール摂取時,またはADH, ALDHの機能低下時には,チトクロームP450(CYP)が誘導され,アルコール代謝のバイパス的役割を担っている.これらの酵素決定遺伝子のうち,ADH2, 31), ALDH2およびCYP IIE1には多型が存在し,個々の人々でアルコール代謝能力が遺伝的に異なる.すなわち,生まれながら不快感なくアルコールそのものの作用を享受できる者,逆に,アセトアルデヒドの不快な作用(顔面紅潮,嘔気,動悸,頭痛など)を強く受け2)飲酒を好まない者が自然と存在する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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