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超遠心分析:そのリバイバル

著者: 高木俊夫1

所属機関: 1大阪大学蛋白質研究所

ページ範囲:P.1334 - P.1334

 "超遠心機"という用語は最高回転数が数万回転/分程度まで可能で,温度と回転数の制御を精度良く行うことができる遠心機を指すと一般に考えられるようになっている.超遠心機は分離のための装置であって,上澄みと沈殿を分離するような初歩的な使用に始まって,密度勾配沈降法のような分離能の優れた方式に至るまでさまざまな様式で愛用されている.しかし,"超"がつく遠心機は強力な遠心場における蛋白質の沈降の様子を観察することを目的として開発されたものであって,主要な推進者の一人であったSvedbergは,沈降係数の単位,S(=10-3秒)に彼の頭文字をとどめている.したがって,40年ほど前までは超遠心機と言えば分析用専用の装置であり,分析用装置を折に触れて分離用に使用することも行われていた.その後,生化学・分子生物学における需要に応えて分離用の超遠心機は質と量の両面で長足の進歩を遂げてきた.他方,分析用超遠心機は,初期の主要目的であった蛋白質の分子量の決定が,ほかの簡便な方法で行えるようになったために衰退の道をたどってきた.
 振り返ると,"物質の沈降の観察"は金をはじめとする鉱物を求めて山野を跋渉した山師たちが,水に懸濁した山土や川砂の挙動を見守って以来の長い歴史を持つ測定法であって,科学のいろいろな局面で他の方法では代え難い貴重な寄与を行ってきた.

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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