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文献詳細

雑誌文献

臨床検査38巻3号

1994年03月発行

文献概要

トピックス

抗腫瘍剤に対する多剤耐性(MDR)遺伝子発現の検出

著者: 竹村譲1 小林広幸1

所属機関: 1防衛医科大学校検査部

ページ範囲:P.366 - P.367

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 従来から,ドキソルビシン(アドリアマイシン)やビンクリスチンなど癌治療に幅広く使われている抗腫瘍剤に耐性となった腫瘍細胞は,他のアントラサイクリン系薬剤,ビンカアルカロイドばかりでなく構造や作用機序が異なる他の抗腫瘍剤に対しても広範な交差耐性,すなわち多剤耐性(MDR;multidrug resistance)形質を示すことが知られていたが,このMDR形質は細胞外への抗腫瘍剤の能動的排泄の亢進,すなわち細胞内薬剤保持能の低下によってもたらされることが明らかにされた.このようなMDR形質を示す細胞の膜には分子量170kDaの糖蛋白(P-glycoprotein; P-糖蛋白)の発現が認められ,このP-糖蛋白が細胞外への抗腫瘍剤排泄の能動的ポンプとして機能していることが示された.
 現在想定されているP-糖蛋白の構造1)を図1に示す.この糖蛋白は獲得耐1生化した細胞ばかりではなく,腎臓,副腎,大腸,膵臓などの正常組織の細胞にも発現が観察され,これら組織由来の悪性腫瘍が化学療法に抵抗性を示す(自然耐性)一因と考えられている.近年,このP-糖蛋白をコードする遺伝子がクローニングされ,MDR-1(mdr 1)と命名されたが,これにより腫瘍細胞におけるP―糖蛋白を介した多剤耐性形質の発現を遺伝子レベルで検出することが可能となった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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