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文献詳細

雑誌文献

臨床検査38巻6号

1994年06月発行

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トピックス

現生人類ミトコンドリアDNAの共通祖先

著者: 長谷川政美1

所属機関: 1統計数理研究所

ページ範囲:P.708 - P.709

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 ミトコンドリアDNAは,通常には母親からしか遺伝しないので,これを用いてわれわれの女系の祖先をたどることができる.地球上には,現在55億人を超える人々が生きているが,これらの人々のミトコンドリアDNAの祖先をたどっていくと1人の女性にたどりつく.この女性のことを,"ミトコンドリアのイヴ"と呼ぶこともある.アメリカ・カリフォルニア大学の故AC Wilson らのグループ1,2)は,このイヴが,およそ20万年前のアフリカにいたという説を唱え,大きな論争を巻き起こした.
 彼らによれば,さまざまな人種からサンプルしたミトコンドリアDNAの系統樹をつくると図1のようになる.系統樹の根元,つまリイヴから,まず2つの系統が分かれ,一方の系統にはアフリカ人しか含まれないのに対して,もう一方は,アフリカ人をはじめあらゆる人種を含んでいる.このことは,現生人類の祖先がアフリカで進化したあと(つまりイヴはアフリカにいた),一部の集団が世界各地に進出していったことを示唆する.また,ヒトと類人猿の分岐に関する研究から割り出されたミトコンドリアDNAの塩基置換速度を用いると,イヴが生きていたのは,およそ20万年前であったという.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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