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遅発性神経細胞死
著者: 井手隆文1 桐野高明1
所属機関: 1東京大学医学部脳神経外科
ページ範囲:P.1082 - P.1083
文献購入ページに移動 脳の神経細胞が,虚血や低酸素に対して特に脆弱であることはよく知られている.一時的心停止例など,脳に短時間の虚血が加わったときには一定の部位の一定の神経細胞群のみが損傷を受ける.中でも海馬CA 1の錐体細胞,線条体外側部の小型細胞,小脳のプルキンエ細胞,大脳皮質の第3層,5層の錐体細胞が特に虚血に脆弱であり6),このような特性は選択的脆弱性(selectivevulnerability)と呼ばれてきた.海馬CA 1領域の錐体細胞では虚血後3~4日に大部分が細胞死に陥るが,細胞死が緩やかに遅れて進行するため遅発性神経細胞死(delayed neuronal death)と呼ばれている.この現象はスナネズミで5分間1),ラットで10~30分間5)の前脳虚血によって観察される(図1).すなわち虚血後の1~2日には,形態学的に明らかな細胞の変化はなく,エネルギー代謝は回復するのに,虚血の3~4日後から海馬CA 1錐体細胞の大部分が崩壊する.同様に大脳皮質の一次感覚野第3層の錐体細胞,線条体背外側部にも遅発性神経細胞死が発生する4).しかし,なぜ限られた領域に遅発性に細胞死が進行するのかは,まだ十分には解明されていない.
従来から虚血性神経細胞死の機構を説明する仮説として,グルタミン酸―カルシウム説がある.
従来から虚血性神経細胞死の機構を説明する仮説として,グルタミン酸―カルシウム説がある.
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