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文献詳細

雑誌文献

臨床検査39巻4号

1995年04月発行

文献概要

トピックス

ヒトT細胞,NK細胞の初期分化段階の指標

著者: 堀利行1

所属機関: 1京都大学ウイルス研究所

ページ範囲:P.474 - P.476

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 T細胞も他の血液細胞と同様,多能性造血幹細胞に由来するが,原則として胸腺の微小環境下で分化成熟する1).これまでのところ,一次造血臓器から胸腺に移動してくる細胞がどのような分化段階の細胞であるかの詳細は不明である.ヒトにおいては,胎児標本の病理組織学的研究から,胎齢7週ごろに肝臓から胸腺原基に集積してくるCD7の細胞がT細胞系前駆細胞ではないかと考えられている2).われわれの解析でも胎児肝内にCD7CD 3の細胞が確かに存在し,それらが大きくCD7lowとCD7highの2つの集団に分けられることを確認している.しかし,多色染色で表面抗原を詳しく調べてみると,CD 7lowはCD 34+の多能性造血幹細胞を含む未分化な血球系前駆細胞から成るheterogeneousな細胞集団であるのに対して,CD 7highの大部分はCD 3CD 56であり,表面形質のうえではNKにきわめてよく似た細胞であることが判明した.
 それでは,CD 7high,CD 3は本当にT細胞系の前駆細胞であるのか,あるいはNK細胞と呼ぶべき性格の細胞なのであろうか.この点を明らかにするために,胎児肝からCD 7high,CD 3,CD 56細胞をセルソーターで精製し,種々の標的細胞に対する細胞傷害活性を検討したところ,図1に示すようにほとんど成人の末梢血のNK細胞に匹敵するキラー活性を示した3)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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