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今月の主題 抗体蛋白 巻頭言
なぜいま抗体蛋白か
著者: 河合忠1
所属機関: 1自治医科大学臨床病理学教室
ページ範囲:P.627 - P.628
文献購入ページに移動 Jennerが,1798年に種痘を始めてからにわかに免疫に関する学問(免疫学)が発展したが,実際に液性抗体についての実体が捕らえられたのは1889年Behringと北里による抗毒素の発見である.すなわち,破傷風菌やジフテリア菌の毒素で免疫した動物の血清中に抗毒素の存在することを証明した.その後,溶菌素,凝集素,沈降素,溶血素,などが次々に発見され,試験管内または生体内における抗原抗体反応が血清中に現れる生理活性物質,"抗体"によって起こると考えたため血清反応(serological reaction),血清学(serology)と呼ばれ,実際の臨床の場では,血清療法とか血清学的診断法(血清診断)として広く利用されてきたのである.すなわち,血清診断ではもっぱら抗体活性を検出するために,凝集反応,沈降反応,細胞溶解(溶菌)反応,補体結合反応,毒素中和反応,などを利用して検査が実施された.つまり,一定量の抗原溶液と一定量の抗体溶液を混合して,特異的抗原抗体反応が見られるかどうか,陽性か陰性か,を定性的に観察することが行われた.さらに,抗原抗体反応を定量的に観察するために,抗原減量法や抗体減量法や総合法(抗原量も抗体量も変える)による方法がくふうされた.すなわち,①陽性結果を示す最高希釈倍数で表現する終価法,②最適比法,③溶菌や溶血などが50%見られる条件で表現する50%法の大きく3つの方法が用いられた.
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