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文献詳細

雑誌文献

臨床検査39巻7号

1995年07月発行

文献概要

トピックス

グリレコーストランスポーター―GLUT4を中心に糖尿病の治療法を考える

著者: 江崎治1

所属機関: 1国立健康・栄養研究所臨床栄養部

ページ範囲:P.832 - P.834

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 1.GLUT遺伝子群と糖尿病
 糖輸送体(グルコーストランスポーター)は血中のグルコースを細胞内に特異的に取り込む役目を持つ約45~50kDaの膜蛋白である.すなわち,細胞の"口"に相当する役目を持つ.ヒトでは,現在2種類の糖輸送機構が知られている.第1は,細胞内外のNa濃度差に依存し,グルコースの濃度勾配に逆らって能動輸送するNa/グルコース共輸送体で,小腸や腎尿細管など特殊な部位に発現している.第2はグルコースの濃度差のみに依存し,拡散により輸送される促通拡散輸送体で,発見された順にGLUT1~5の番号が付けられている1).GLUT1は血液一組織関門(例えば,脳血液関門,網膜,胎盤など)に強く発現し,弱いながら他の組織にも一様に発現している.GLUT2は肝臓や膵β細胞に,GLUT3は脳に,GLUT4は骨格筋や脂肪組織に発現し,GLUT5は上部消化管で主としてフラクトースの吸収に関与している.
 これらのGLUT遺伝子群が注目を集めているのは,①糖尿病の原因となる遺伝子異常の候補となりうること,②環境の変化によりGLUTの遺伝子の発現量が変化し糖尿病の発症に関与する可能性があること,からである.①の可能性を明らかにするためpopulation studyや1inkage解析などの多くの研究が行われたが,結果は否定的であり,糖尿病の主要な成因となる可能性は少ない.②に関してはGLUT 4が注目を集めている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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