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文献詳細

雑誌文献

臨床検査39巻8号

1995年08月発行

文献概要

トピックス

細菌性下痢症と嚢胞性線維症

著者: 飯田哲也1 本田武司1

所属機関: 1大阪大学微生物病研究所

ページ範囲:P.964 - P.966

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1.嚢胞性線維症とCl-イオンチャネル
 コレラ毒素による下痢に,腸管上皮細胞に存在するcAMP依存性Cl-イオンチャネルが関与していることは,生理学的な解析により早くから明らかにされていた1)が,その物質的な実体については多くの研究にもかかわらず不明であった.しかしながら,最近,遺伝病である嚢胞性線維症(cystic fibrosis;CF)の原因遺伝子が明らかにされたことにより,コレラ毒素による下痢惹起の機構についての研究が新たな局面を迎えている.
 CFは白色人種に多い常染色体劣性遺伝疾患で,米国では出生児2,500人に1人の割合で発症する.発育不全,慢性閉塞性肺疾患,膵機能不全といった臨床症状がみられ,治療をせずに放置すれば重篤な肺感染症や膵機能不全に伴う栄養不全のため幼少期に死亡する.障害の起こる臓器の病理学的な特徴としては,粘稠な分泌液による分泌管や分泌腺の閉塞と,これによる末梢組織の炎症,感染と線維化であり,これらの症状は主に分泌上皮でのイオンや水分輸送の障害による.1983年,Quinton2)がCF患者の汗腺でCl-イオンの透過性異常がみられることを報告して以来,CFの症状の本態がcAMP依存性Cl-イオンチャンネルの異常であることを示す成績が蓄積されてきていた3)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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