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文献詳細

雑誌文献

臨床検査39巻9号

1995年09月発行

文献概要

今月の主題 人畜共通感染症 病態と技術解説

ライム病

著者: 川端眞人1

所属機関: 1神戸大学医学部医学研究国際交流センター

ページ範囲:P.1013 - P.1019

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 ライム病は野山に生息するマダニによって媒介されるボレリア感染症で,ヨーロッパ諸国,アメリカ合衆国(米国),そして日本を含む東アジアに流行する.病原体ボレリアはBorrelia burgdorferiで,患者の病変部,血液,媒介マダニの中腸から分離される.典型的な症状は感染早期にマダニ刺咬傷部に一致して出現する遊走性紅斑であるが,感染の経過に伴い病原体ボレリアは拡散し全身性の多彩な症状を呈する.感染早期は抗生物質によく反応するが,一部の慢性期症状は進行性で治療に抵抗する.臨床経過は流行地による地域差があり,地域ごとのボレリア病原性の違いに由来すると考えられる.現在,ヨーロッパでは病原体ボレリアであるB.burgdorferiは3種に分けられ,そのうちの1種が米国に存在する.ヨーロッパでは神経系や皮膚の症状が多彩であるのに対し,米国では関節症状が主体である.日本の主要ライム病原体はヨーロッパ種とは異なり,病原性が穏やかな固有の種であると推定される.マダニ媒介感染症は地球環境の変貌に伴い,流行地の動向に注意が必要である.〔臨床検査 39:1013-1019,1995〕

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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