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文献詳細

雑誌文献

臨床検査39巻9号

1995年09月発行

文献概要

トピックス

テロメラーゼ

著者: 香川靖雄1

所属機関: 1自治医科大学第1生化学

ページ範囲:P.1077 - P.1078

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 すべての動物の染色体の末端にテロメアというDNAのTTAGGG繰返し構造を持つ.この構造を作る1種のDNAポリメラーゼがテロメラーゼ(正式名称DNA:nucreotidylexotransferase,酵素番号EC 2.7.7.―)であって,RNAを含む蛋白質である.これは老化や癌の本質的酵素として最近急速に研究が進んでいる.ヒトや哺乳類などの多細胞生物は事故や感染などの外因がなくとも,種に固有の平均寿命を示す.
 老化とは時間経過に伴って起こる臓器の縮小,機能低下である1).老化臓器の重量減少は体細胞に寿命があって分裂が停止し死滅するからである.また機能の低下も細胞機能の減少による.胎児から各年齢の被検者の細胞を調べると各種の機能が激減していくのがわかる2).ヒトの体細胞の寿命は有限分裂能約50回で,年をとった被検者の細胞の分裂能は1年当たり約0.2回減少する.この残存分裂能は細胞分裂回数で決まり代謝時間や暦年には関係がない.例えば細胞を凍結保存しておけば,数十年も生存させることができる.細胞分裂回数を数えているのはテロメアである.細胞は分裂によってテロメアが短縮する(図1).なぜならDNAの複製でDNAの末端が短くなるからである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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