今月の表紙 表在性真菌症の臨床検査シリーズ
皮膚糸状菌症 1.原因菌と直接鏡検
著者:
山口英世1
内田勝久1
楠俊雄2
所属機関:
1帝京大学医真菌研究センター
2くすのき皮膚科
ページ範囲:P.372 - P.373
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皮膚糸状菌症(白癬)は,皮膚糸状菌と総称される分類学的に近縁な一群のケラチン(角質)好性の糸状菌が,完全に角化した表皮組織:角質層,毛,爪に侵入し発育する結果引き起こされる局所感染であり,俗に"みずむし"などと呼ばれる.白癬はさまざまな病型を含むものの,全体としては真菌症の中で最も発生率が高く,罹患者は全人口の約10%にものぼると言われる.白癬の症状は,特殊な病型を除けば比較的軽いが,角化組織内に侵入した菌は生体防御系から免れて容易に排除されないばかりか,抗真菌剤による治療にも抵抗して難治性となるかまたは再発を繰り返す例も少なくない.またいったん治癒した場合でも,皮膚糸状菌が皮膚の常在菌であるうえに,ヒトからヒトまたは動物(ペット,家畜など)からヒトへ伝播するために,容易に再感染が起こりうる.このような理由から,白癬は発生率のみならず治療対策の面からも表在性真菌症の中で最も厄介な疾患といえる.
これまで類縁菌を含めて約40種の皮膚糸状菌が記載されており,そのすべてが不完全菌類の中の3つの属Trichophytom, Microsporum, Epidermophytonのいずれかに所属する.しかし実際に国内で患者などから分離される菌種の数はさほど多くはない.