資料
迅速細胞診誤判定例の検討
著者:
鐵原拓雄1
安部陽子1
大杉典子1
三宅康之1
畠榮1
広川満良2
所属機関:
1川崎医科大学附属病院病院病理部
2川崎医科大学病理学教室
ページ範囲:P.743 - P.745
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1992年3月から1995年5月までの約3年間にDiff・Quik染色を用いて迅速細胞診を行った280症例中誤判定した20例について検討した.迅速判定の診断精度は,感度90.4%,特異性95.8%,陽性予測値92.8%,陰性予測値94.1%であった.偽陽性は8例(悪性リンパ腫:3例,扁平上皮癌:5例)で,診断力不足に加えて,臨床情報による思い込みも原因の1つと考えられた.偽陰性は12例(悪性リンパ腫6例,扁平上皮癌2例,粘表皮癌2例,カルチノイド1例,腎細胞癌1例)であった.原因としては,悪性リンパ腫では小細胞型や混合型を良性と誤判定した.扁平上皮癌や粘表皮癌では,高分化型の場合や背景に炎症反応が強い場合に良性と誤判定した.またホジキン病や腎細胞癌では,診断的な細胞の採取量が少なかったためにスクリーニング時に見落としていた.対策として,臨床情報にとらわれないで出現細胞を注意深く検索することを心掛けること,また外来現場で臨床医からのプレッシャーにあまり惑わされないで,冷静に判定することが重要と思われた.また診断者の診断力の向上に努力することも重要である.