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多包性エキノコックス症―本州への流行域拡大の懸念
著者: 金澤保1 二瓶直子1 藤田修2
所属機関: 1国立感染症研究所・寄生動物部 2国立感染症研究所・獣医科学部
ページ範囲:P.1184 - P.1185
文献購入ページに移動本題に入る前にエキノコックスについて簡単に説明を加えると,キツネやイヌなどの小腸に成虫が寄生し,その虫卵は糞便とともに外界に散布され,中間宿主への感染源となる(図1).野ネズミが中間宿主の役割を担っているが,ヒトも虫卵を経口摂取すれば感染し,主に肝臓に多包虫と呼ばれる幼虫が寄生することになる.本来は,人間生活とは無縁の自然界においてキツネと野ネズミの間で維持されてきた寄生虫であるが,たまたま人間がその生活環に巻き込まれて感染,発症する病気と考えてよい.ちなみに,平成6年度の調査によれば,キタキツネの感染率は約25%であり,それ以前と比較し急増していることが報告されている.土井(1995)は,礼文島での患者発生の推移を基にして試算したところ,北海道全域で今後15~20年のうちに約1,000人のエキノコックス症患者が発生すると警告している3).
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