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文献詳細

雑誌文献

臨床検査41巻10号

1997年10月発行

文献概要

トピックス

ヒト血清マンノース結合蛋白

著者: 寺井格1 小林邦彦2

所属機関: 1北海道立衛生研究所疫学部臨床病理科 2北海道大学医学部小児科

ページ範囲:P.1185 - P.1188

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 ヒト血清マンノース結合蛋白(mannose-bind-ing protein;MBP)は,レクチンの1つで,ヒトをはじめ多くの動物に存在する.ヒトのMBP遺伝子は第10染色体長腕上にあり,4つのエクソンからなる.構造的には,(1) N末端にシステイン残基を3個含む領域,(2)中間部にコラーゲン様構造(Gly-Xaa-Yaaの繰り返し配列),(3)C末端に糖鎖認識部位(carbohydrate recogni-tion domain;CRD)の3つの領域を持つ分子量3万2千のサブユニットが,3本,コラーゲン様構造部分で絡まって,三重らせんをなし,分子量9万6千の構造単位を形成する.この構造単位が2~6個,N末端でジスルフィド結合してMBP全分子(ホモポリマー)をなす(図1).三次構造はC1qと似て,花束状と称される.コラーゲン様構造,糖鎖認識部位を有するレクチンはコレクチン(collectin)と総称され, MBPの他に,肺サーファクタント・アポ蛋白A,D (SP-A, SP-D),コングルチニン,CL43などがある.Clqは糖鎖認識部位を欠くが,コレクチンファミリーに分類されている.いずれも,オプソニン活性を持つ生体防御因子と考えられる.
 MBPはCa2+依存性にN-アセチルグルコサミン,マンノースなどの糖鎖と結合し,オプソニン作用を発揮するが,池田らはこれに補体活性化作用もあることを見いだし,さらに松下らは,補体活性化にはMBPと複合体を形成するセリンプロテアーゼ(MBP associated serinepro tease;MASP)が関与することを見いだした.MASPは分子量8万3千で,構造的,機能的にClsに類似した蛋白である.川上らも,古くからサルモネラに結合し,補体依存的に殺菌作用を示す脊椎動物の血清成分をRaRF (Ra reactive factor)と名付けて研究してきたが,これはMBPとMASPとの結合体であることが判明した.MBPMASP複合体では,異物上の糖鎖と結合したMBPがMASPを活性化する.活性化されたMASPは,そのセリンプロテアーゼ作用によりC4, C2を切断し,C3転換酵素(C4b2a)を形成するとともに,弱いながらも直接C3を分解する活性をも有し,以後の補体活性化反応を導く(図2)2,4.その,抗体を介さない新しい第3の補体活性化経路はレクチン経路と名付けられた.われわれは,MASPにはプロテアーゼ阻害作用を持つα2マクログロブリン(α2M)が結合してその活性化を阻害することを見いだし,MBP-MASP複合体の補体活性化はα2Mを介して制御される可能性を示した.活性化はC1インヒビターでも阻害されることから,生理的条件下ではどちらが主役か興味がもたれる.ごく最近,デンマークの一派が,新しいMASP (MASP 2)の存在を報じ,従来の松下らのMASPをMASP 1と命名した.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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