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文献詳細

雑誌文献

臨床検査41巻2号

1997年02月発行

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トピックス

"Innocent carcinoma"

著者: 小俣好作1

所属機関: 1社会保険山梨病院病理部

ページ範囲:P.201 - P.202

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 "innocent carcinoma"は甲状腺微小乳頭癌に対して,香川県立がん検診センターの武部晃司氏が提唱した言葉である1).超音波検査を用いた検診で発見され,穿刺細胞診により微小乳頭癌と診断された非手術例の経過観察で,3年6か月から4年6か月の間に12例中腫瘍径が増大したのは1例だけで,ほかの11例はすべて縮小し,うち1例では超音波画像上病変部は描出困難になったことを報告している.
 剖検例の甲状腺を丹念に調べると,多数の微小癌が発見されることは以前から言われてきた.そのような癌は潜在癌(latent carcinoma)と呼ばれ,甲状腺では10%以上のヒトに発見されるが,近年,超音波検査の普及,精度の向上により,生前から検診などにより発見される機会が増えてきた.社会保険山梨病院健康管理センターでは,1983年から1985年にかけ,検診受診者のすべてに甲状腺の超音波検査を行い,限局性の腫瘤状陰影のみられた受診者に対しては積極的に穿刺吸引細胞診を施行した2).図1のように男性受診者の4.1%,女性受診者の8.9%に腫瘤がみられ,男女とも加齢とともにその数を増し,60歳以上の女性では22.9%にみられた.その大部分は腺腫様甲状腺腫であるが,男女,各年代とも腫瘤の約1割に乳頭癌が発見された.微小乳頭癌は潜在したまま経過する可能性が高く,直ちに手術を行うべきか否かは問題とされてきた3).前述の武部氏も,超音波により発見される甲状腺微小癌は無害の癌(innocent carcinoma)として,治療対象外とする手術適応基準を設定するべきと主張している.甲状腺微小癌については,あえて発見しない,発見しても診断しない,診断しても手術しないということが必要となってきているとの意見もある1)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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