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文献詳細

雑誌文献

臨床検査41巻7号

1997年07月発行

文献概要

今月の表紙 深在性真菌症の臨床検査シリーズ・3

酵母様真菌による感染症(1)―鑑別分離培地を利用する検査法

著者: 山口英世1 内田勝久1

所属機関: 1帝京大学医真菌研究センター

ページ範囲:P.726 - P.727

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 わが国で通常みられる深在性真菌症は,アスペルギルス症などを除けば,カンジダ症をはじめ,クリプトコッカス症,トリコスポロン症など大半のものが酵母様真菌(酵母)に起因する.それぞれの疾患の原因菌は,Candida spp.,Cryptococcus neoformansおよびTrichosporon beigelii(T.asahii)である.カンジダ症の原因菌種としては,かつてCandida albicansが圧倒的に大きな比率を占めていたが,近年幾種ものnon-albicans Candidaに起因する症例がますます増えている.これらの異なる疾患は無論のこと,同じカンジダ症の中でも原因菌種によって病態,予後,治療への反応などが異なることが多いので,菌種レベルの診断すなわち原因菌の同定がきわめて重要となる.
 酵母は,菌糸状真菌(糸状菌)に比べて発育形態が比較的単純で特徴に乏しいところから,莢膜を持つCr.neoformansを除ければ,蛍光抗体法や酵素抗体法でも用いない限り,直接鏡検や病理組織学的検査から原因菌の菌種を推定することは困難な場合が多い.しかしその一方で,酵母は取り扱いが容易で,細菌と同様に比較的短い培養で単一コロニーをつくり,しかも菌種特異的な生理学的特徴(代謝活性)を持つ.この特徴を利用して,酵母の分離と鑑別という2つの機能を備えた寒天培地がいくつか考案されている.前者の目的には培地中にクロラムフェニコールなどの抗菌薬を添加して細菌発育を抑制する.また後者については,各種基質に対する真菌の酸化還元能の違いを利用し,培地中に含有された色素の発色色調の違いなどから菌種を識別することを原理としている.以下に現在国内で市販されているいくつかの鑑別分離培地を紹介する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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