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文献詳細

雑誌文献

臨床検査41巻7号

1997年07月発行

文献概要

コーヒーブレイク

1枚の血液標本の観察がカナダ青年の命を救う

著者: 寺田秀夫12

所属機関: 1聖路加国際病院内科 2昭和大学内科

ページ範囲:P.792 - P.792

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 1992年9月から,東南アジアおよびインド,インドネシアの一人旅を続け,その間,街の中の生活と森の中でのキャンプ生活を半々に続けてきた18歳のカナダ人青年が,1993年3月から全身倦怠感,食思不振,発熱が出現したため,帰国途中来日し,某病院に入院加療を受けたが,診断名つかず,病状悪化のため本院に1993年4月6日緊急転院.
 入院時,高熱のためか憔悴しきった白人青年で,汎血球減少(WBC3,500/μl,RBC 340×104/μl,Hg 9.8g/dl)とDICの所見(PT 33秒, Fbg33.0mg/dl,AT Ⅲ 44%,FDP 44.4μg/ml)がみられた.直ちに末梢血標本を経験豊かな技師が観察すると,熱帯性マラリア原虫に特有なマウレルMaurer斑点を有する環状体が1つまたは2~3個赤血球に貪食されており,また分裂体schizontの集合像,また半月状生殖母体(crescentic gametocyte)も多数みられ,熱帯性マラリアと確定診断.骨髄でもマラリア原虫を寄生している赤血球を貧食している多数の細網細胞(反応性細網症)がみられ,肝・腎機能の明らかな障害もみられた.熱の波型は夕方から夜間にかけ40℃に上昇し,明け方下るというパターンで3日間続いた.熱帯性マラリアと確定後直ちに主治医はアメリカのCenters for Disease Control;CDC (米国疾病対策センター)と連絡し,キニーネ投与を開始した.この間マラリア原虫は末梢血中に最高10.5%にまで達したが,第5病日には0.04%に減少し,DICもヘパリン,FOY,AT Ⅲの投与で改善したが,第4病日に肺水腫を併発し,O2投与も功を奏せず,第10病日まで人工呼吸器管理.その後さらに右気胸を起こし癒着術を施行し,第21病日にようやく退院となった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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