icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床検査42巻11号

1998年10月発行

文献概要

Topics 1998

耐性マラリア

著者: 金澤保1

所属機関: 1産業医科大学医学部寄生虫学,熱帯医学

ページ範囲:P.1475 - P.1475

文献購入ページに移動
 耐性マラアリアの問題は極めて深刻であり,それによる脅威は急速に増しつつある.WHOによるとマラリアによって毎年200万人以上の死者が出ているものと推定されている.ヒトにマラリアを発症させる原因微生物として4種のマラリア原虫が知られているが,このうち最も重篤な疾病を惹起するのが熱帯熱マラリア原虫である.マラリアによる死者の大半はこの原虫に起因する熱帯熱マラリアによるものであって,流行地に居住している子供が主たる被害者である.成人であっても非流行地に居住しているnon-immuneの人は,本症に罹患した場合,早期に適切な治療がなされなければ高率に死亡する.熱帯熱マラリアが悪性マラリアと呼ばれているゆえんである.耐性マラリアが深刻な問題である理由は耐性マラリアのほとんどが熱帯熱マラリアであり,しかもその流行地域が拡大していることにある.
 抗マラリア薬としてキニーネ,クロロキン,プログアニルなどの葉酸代謝拮抗剤,メフロキン,ハロファントリンおよびアルテミシニンなどがある.これらすべての薬剤に程度の差こそあれ耐性株が確認されている.近年までマラリア治療の主役の座にあったクロロキンは耐性株の蔓延のため,第一選択薬として治療に用いることのできる地域が極めて限られてしまった.クロロキンに代わって登場してきたメフロキンに対しても耐性株の報告が急増している.1剤に対する耐性にとどまらず2剤3剤に対するいわゆる多剤耐性株も出現し,事態の深刻さに拍車をかけている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?