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文献詳細

雑誌文献

臨床検査42巻11号

1998年10月発行

文献概要

Topics 1998

新型インフルエンザ

著者: 菅谷憲夫1

所属機関: 1日本鋼管病院小児科

ページ範囲:P.1482 - P.1482

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 インフルエンザウイルスはRNAウイルスで,表面に赤血球凝集素(HA)とノイラミニダーゼ(NA)のスパイクを持つ.A型インフルエンザはヒト以外に,トリ,ブタ,ウマに存在する.新型インフルエンザの出現は,抗原不連続変異と言われ,トリとヒトのA型インフルエンザの遺伝的再結合により生じる.突然変異ではない.ブタの気道に,ヒトとトリのインフルエンザが同時に感染すると遺伝子の組替えにより,トリのHAを持ったヒト型インフルエンザができる.トリのインフルエンザが,そのまま,ヒトの世界に侵入することもある.香港のH5N1インフルエンザは,トリのインフルエンザが,直接,ヒトに感染したもので,毒性が強く18例中6例が死亡している.H5Nlは中国本土にルーツがあると考えられ,今後も繰り返して出現する可能性がある.
 新型インフルエンザの出現した場合,日本では,約3,000万人が発病すると考えられる1).インフルエンザの死亡率は低く,0.1~0.2%程度であるが,3,000万人が発病すると,死亡者は低くみても3~4万人は発生することになる.この場合の死亡は毎年のインフルエンザと同様,老人とハイリスク群が多数を占めると考えられる.スペインかぜは,毒性が強かったことが記録されている.日本では死亡率は1.6%と異常に高く,約40万人が死亡した.死亡者の多くが,20~40歳台であった.万一,毒性の強い新型インフルエンザが出現した場合は,被害は健康成人にも及び,10万人以上の死亡者の発生する危険もある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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