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文献詳細

雑誌文献

臨床検査42巻13号

1998年12月発行

文献概要

今月の主題 検査項目の再評価 話題

ポイント・オブ・ケアテスト

著者: 巽典之1 津田泉1 田窪孝行1 日野雅之2

所属機関: 1大阪市立大学医学部臨床検査医学教室 2大阪市立大学医学部総合診療科

ページ範囲:P.1660 - P.1664

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1.ポイント・オブ・ケアテストとは
 これまでわが国における臨床検査は,背景にある国民健康向上の必要性と同時に国家経済の発展に支えられ,自動化・システム化の方向へと急成長を遂げてきた.この基本思想としては,①多検体に対する多項目同時測定,②迅速化,③省力化,④精度と正確性の向上,⑤経済性の追求,があり,さらに最近では,⑥国際的標準化,⑦安全性向上,⑧環境保護,もこの中に含まれるようになり,検査の質は年々向上していることが諸種の臨床検査精度管理調査報告からうかがい知れる.しかしながら一定の医療水準目標が達成されたことと,長寿化による高齢者人口の増加,国家経済の翳(かげ)りと保険経済の破綻の影響を受け,臨床検査全体の成長が停止した状況に追い込まれている現状にある.最近では臨床検査の有用性(臨床的効率:clinical utility)が医療の観点だけでなく経済的な観点から見直しされており,再度注目されているのがポイント・オブ・ケア(Point-of-Care; POC)テストである.POCテストはnear-patient testあるいはbed side testとも呼ばれ,簡便かつ迅速に患者の側で検査を実施して結果の得られる臨床検査を指しており,具体的には尿や血糖の試験紙テストを意味していた.
 わが国におけるPOCテストの歴史は古く,尿検査試験紙法は尿糖濃度を目視判定するテステープ(イーラィ・リリー)を皮切りに,その後,糖・蛋白・潜血・pH・ケトン体ほか多項目の迅速同時比色測定が可能な自動機器が開発され,今ではほとんどの医療機関でその装置が利用される現状にある.他方,臨床化学分野で一世を風靡したものにRaBAシステム(中外製薬)がある.このシステムは1970年に上市され,多くの実地医家に愛用されたもので,液状試薬により反応させ,波長変換型光電比色計で吸光度を測定する方法であって,準備された計測法項目も30種類にわたっていた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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