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文献詳細

雑誌文献

臨床検査42巻2号

1998年02月発行

文献概要

トピックス

β3アドレナリン受容体

著者: 長谷川雅昭1 原納優1

所属機関: 1国立循環器病センター動脈硬化代謝臨床栄養部門

ページ範囲:P.214 - P.215

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1.β3アドレナリン受容体
 交感神経の興奮により神経終末端からノルアドレナリンが放出され,組織のアドレナリン受容体と結合することにより効果が発揮される.従来,哺乳動物には2種類のアドレナリン受容体,すなわちβ1アドレナリン受容体(β1AR),β2アドレナリン受容体(β2AR)の存在が確認されていた.β1ARの刺激は主として心収縮力の増強,心拍数の増加を,またβ2ARの刺激は主として気管支拡張,血管・子宮平滑筋弛緩をきたした.
 一方,哺乳動物には白色脂肪,褐色脂肪の2種類の脂肪組織が存在する.白色脂肪組織は皮下・内臓に広く分布し,肥満者ではここに大量の中性脂肪が貯蔵される.また褐色細胞組織は,ヒトでは新生児期を除いては同定が難しいが,寒冷時に熱産生器官として働く.これらの脂肪組織には,従来β1ARが単独もしくはβ2ARと共存して存在し,交感神経刺激により,貯蔵された中性脂肪が分解され,脂肪酸が酸化される.しかし,1984年Archらが褐色脂肪細胞の脂肪分解を促進する新しいアドレナリン受容体刺激薬を合成した1).この化合物は,従来のβ1あるいはβ2アドレナリン受容体刺激薬が持つ心拍数増加作用,気管支平滑筋弛緩作用を有さないことから,褐色脂肪細胞にはβ1,β2以外の第3のアドレナリン受容体が存在することが示唆された.そして,1989年ヒトβ3アドレナリン受容体(β3AR)がクローニングされ2),その後マウス3),ラット4)β3ARも相次いでクローニングされた.ヒトβ3ARは細胞膜7回貫通型受容体で,全長が408個のアミノ酸から成り(図1),脂肪組織のほか,腸管,胆嚢にも発現することが確認されている5~7)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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