icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床検査42巻5号

1998年05月発行

文献概要

トピックス

中皮細胞の免疫組織化学的特徴―新しい中皮マーカーを中心に

著者: 伊藤仁1 長村義之2

所属機関: 1東海大学医学部付属病院病理診断科 2東海大学医学部病態診断系病理学部門

ページ範囲:P.585 - P.585

文献購入ページに移動
 臓側,壁側の漿膜表面を覆う中皮細胞は,炎症などに伴い異型性を有するため,体腔液細胞診では腺癌との鑑別がしばしば問題となる.また,その腫瘍である中皮腫は組織学的に上皮型,線維型(肉腫型)および二相型(混合型)に分類され,上皮型は腺癌,線維型は肉腫との鑑別が困難となる場合が多い.これらを鑑別するために,中皮細胞および中皮腫の特徴について細胞学的,組織学的,組織化学的,電顕的,免疫組織化学的な種々の手法を用いて検討されてきた.なかでも,近年飛躍的に普及した免疫組織化学的手法は,この鑑別診断に最も有用な技法の1つとなっている.
 中皮細胞は免疫組織化学的にケラチン,ビメンチン,デスミンの3種の中間径フィラメントが陽性を示す.特に肉腫型中皮腫におけるケラチンの証明は,肉腫との鑑別診断上重要である.また,卵巣癌の腫瘍マーカーであるCA 125が高率に陽性を示し,epithelial membrane antigen (EMA)は中皮細胞では陽性率が低いが,中皮腫,特に上皮型では高陽性率を示す.また,従来からcar-cinoembryonic antigen (CEA)が腺癌との鑑別に有用なマーカーとして応用されている.CEAと同様に中皮腫では陰性を示すマーカーとして,Ber-EP 4, Leu-M 1,VU-1 D 9, B 72.3などのモノクローナル抗体が知られている.また,新しい上皮性マーカーとしてMOG-31(Dako)と言われるモノクローナル抗体が市販されている.筆者らの体腔液を用いた検討では,腺癌は高い陽性率を示し,中皮細胞の陽性率は低く,陽性を示す症例でもその数はきわめて少ない(表1).

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?