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文献詳細

雑誌文献

臨床検査42巻5号

1998年05月発行

文献概要

トピックス

IgA腎症と尿中マクロファージ

著者: 堀田修1

所属機関: 1仙台社会保険病院腎センター

ページ範囲:P.588 - P.590

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1.はじめに
 IgA腎症は原発性糸球体腎炎の中で最も頻度の高い疾患であると同時に,末期慢性腎不全の主要疾患の1つである.IgA腎症は1968年に初めてフランスのBergerら1)により報告された.IgA腎症は進行が緩徐であるため,当初は予後良好な疾患と考えられていた.そのため1980年代まではIgA腎症に対する積極的な治療はまれにしか行われていない.しかし,1990年代になり20年の経過で約40%のIgA腎症患者が末期腎不全に至るという悲観的な長期予後が判明し,近年,特に実地の臨床医家の間でステロイド剤を含む積極的な治療が行われるようになってきた.IgA腎症に対し積極的な治療を行わないのであれば,臨床的見地からは腎生検によって得られた組織の一部を蛍光抗体法により検索しIgA腎症であるという確診を得ればそれでよい.もっと極端な言い方をすれば,有効な治療をしないのであれば腎生検でIgA腎症の診断を得ることは学問的には意味があっても,患者自身にとって,たいした意味はないことになる.実際,最近の20年間に腎生検により莫大な数に上るIgA腎症患者の診断がなされ,分子生物学の隆盛とあいまって学問的には有意義な多くの研究が行われてきた.しかし,これらの研究がlgA腎症患者に有益な成果を直接もたらすに至っていないのは最近20年間の慢性糸球体腎炎の新規透析導入患者数がまったく減少傾向を認めていないことから明らかである.現在,われわれはIgA腎症に対し積極的治療を行う時代に入ったと考えている.IgA腎症に積極的治療を行う際,最も重要な点は腎症の病勢の正確な把握にある.われわれの施設では,尿中のマクロファージの解析がIgA腎症の病態評価に際してきわめて有用であることを見いだし,日常診療の場で活用しているのでここに紹介したい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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