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文献詳細

雑誌文献

臨床検査42巻9号

1998年09月発行

文献概要

トピックス

輸入感染症としてのカラ・アザール(内臓リューシュマニア)

著者: 山田誠一1 月舘説子1 藤田紘一郎1

所属機関: 1東京医科歯科大学医学部医動物学教室

ページ範囲:P.1046 - P.1048

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 白血病の診断時に脾腫ということで,カラ・アザールが鑑別診断として成書には取り上げられている.わが国ではカラ・アザールを鑑別する必要があるのだろうか.カラ・アザールの診断は簡単にできるのか.診断にはどのような検査がされるのであろうか.どのようなことに留意しておく必要があるのか.カラ・アザールの診断の難しかった症例からカラ・アザールをみてみよう.
 カラ・アザールはわが国では第二次大戦のころに300例ほどみられたが,最近では輸入感染症として注目を浴びる本当にまれにみられる寄生虫疾患である.以前,全身倦怠感と発熱を主訴とし,診断の難しかったカラ・アザールの30歳の女性患者を経験した1~3.カラ・アザールの鑑別診断では渡航歴が重要であり,彼女にはアメリカとインドへの滞在歴があった.しかし,カラ・アザールの診断は容易ではなかった.はじめにアメリカで,彼女は発熱ということで感染症も疑われ,HIV,EBV,CMV,HAV,HBV,HCV,トキソプラズマ,サルモネラ,ライム,Q熱,マラリア,ブルセラ,プロテウス,コクシエラ,ツラレミア,真菌などの検査をしたが,確定診断を得られなかった.次に骨髄生検,肝生検でhistiocytesの浸潤をみるが,悪性細胞は認められなかった.これらの検査をするが確定診断ができず,脾腫が認められ,同時に汎血球減少が出現したので脾腫摘出手術を受け,確定診断のつかないままステロイドホルモンの投与により,症状が落ち着き帰国した.そして精査のため入院となった.再度,骨髄穿刺されたが,悪性リンパ腫の確定診断が得られなかった.やはり,感染症が疑われ抗菌療法をされた.また,ステロイドホルモンの減量をしたところ,弛張熱をみるに至った(図1).腹部CTにより肝臓の著明な腫大を認めた(図2).そこで,また骨髄生検を行ったところマクロファージにLeushmania donovaniのアマスチゴートを認めた(図3).確認の意味で骨髄および血液を培養したところ,Leushmaniadonovaniのプロマスチゴートを認め(図4),カラ・アザールと確定診断された.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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