文献詳細
文献概要
トピックス
Diaspirin Crosslinked Hemoglobin(DCLHb)―新しい人工酸素運搬治療薬
著者: 池淵研二1 関口定美1
所属機関: 1北海道赤十字血液センター
ページ範囲:P.1048 - P.1049
文献購入ページに移動ヘモグロビン分子を素材とした人工酸素運搬体には,それぞれヒト赤血球由来ヘモグロビン,遺伝子組換え型ヘモグロビン,ウシヘモグロビンを用いる3種類がある.またヘモグロビンそのものを直接利用する方法と,生体膜に近いリポソームの中に内包させて用いるタイプとの2種類がある.
ヘモグロビン分子はα鎖,β鎖各2本の末端にヘムが各1個,計4個結合した四量体である.直接ヘモグロビンを血管内に投与するとα鎖間の結合が切れ二量体に分解されるため,低分子化したヘモグロビンは腎臓糸球体を透過し,尿細管で水の再吸収に伴い濃縮され間質性腎炎を惹起する.そのため分子内を架橋することが大切になる.またヘモグロビンの酸素解離曲線を維持するためには,ヘモグロビンの酸素結合能のアロステリック効果を維持する必要があり,ヒトでは2,3-DPGが働いているが,ウシヘモグロビンにはこの物質がなくとも酸素親和性が低く末梢組織での酸素解離が容易である.このため溶血後2,3-DPGの消失するヒトヘモグロビンの場合は,親和性の維持にピリドキサール化や分子修飾が必要になる.リポソーム内包型ヘモグロビンは膜の中にヘモグロビン以外に赤血球酵素,抗酸化剤などを閉じ込めることが可能であり,赤血球の有する機能に近づけることが可能になる.
掲載誌情報