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文献詳細

雑誌文献

臨床検査43巻10号

1999年10月発行

文献概要

今月の主題 血管壁細胞 話題

Hemangioblast

著者: 高倉伸幸1

所属機関: 1熊本大学医学部遺伝発生医学研究施設分化制御部門

ページ範囲:P.1152 - P.1157

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1.はじめに
 血管内皮細胞と造血幹細胞はhemangioblastと呼ばれる共通祖先細胞から分化してくると考えられている.hemo-angioblastというスペリングから,日本語では血液血管前駆細胞と訳されることが多い.現在このhemangioblastに関しては明確な定義はまだない.それはhemangioblastが単一の細胞として同定されていないからである.しかしhemangioblastがどのような祖先細胞から分化し,どのような分化過程を経て血液細胞あるいは血管内皮細胞になるのかという問題に分子生物学的アプローチがなされてきている.
 なぜ最近hemangioblastが注目されるようになってきたのだろうか? hemangioblastから分化する造血幹細胞は,赤血球をはじめリンパ球,好中球,巨核球などに分化する,つまり多分化能を持ち,さらに自己複製能を持つ.この点から骨髄移植や遺伝子治療におけるターゲット細胞になっている.そこで臨床応用に向けて,造血幹細胞を生体外で増幅させることが望まれている.しかし現在のところ造血幹細胞を分化させずに増殖させられる成長因子はまだ見つかっていない.そういう因子が実際に存在するのか否かを証明するようなデータも現在のところ存在しない.その点において,hemangioblastを同定することにより,hemangioblastから分化した直後の造血幹細胞の細胞表面形質を詳細に検討することで,成体の骨髄内に存在する造血幹細胞と比較し,それらが真に自己複製をする幹細胞なのか,それとも既に分化段階に入っている造血前駆細胞なのかを比較検討できる.hemangioblastから分化した直後の造血幹細胞と同様な表現型を示す造血幹細胞が成体の骨髄に存在すれば,それらの細胞表面の受容体を新規のものを含め詳細に検討し,その受容体に対するリガンドを検索することによって,造血幹細胞の自己複製にかかわる因子を同定できる.これらは造血幹細胞の試験管内での増殖という方向性において大きな臨床的意義を持つ.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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