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文献詳細

雑誌文献

臨床検査43巻10号

1999年10月発行

文献概要

今月の主題 血管壁細胞 話題

血管新生抑制物質とがん治療

著者: 𠮷田輝彦1

所属機関: 1国立がんセンター研究所分子腫瘍学部

ページ範囲:P.1158 - P.1165

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1.血管新生とは
 血管新生はangiogenesisとvasculogenesisに分類される1).前者は既存の血管から新しい分枝が内皮細胞の分裂とsproutingにより派生してくる方式での血管新生を言い,後者はいまだその詳細が明かではない血管の幹細胞,angioblastまたは造血系の細胞と血管内皮細胞との共通の前駆細胞であるhemangioblastから新たに血管内皮細胞が分化して血管が作られる過程を言う.Vasculogenesisは従来胚の初期発生過程においてみられるとされていたが,最近,成体の末梢血などにもangioblastが存在し,虚血時などに動員され,血管新生にかかわるというたいへん興味深い知見が得られている2,3)
 血管新生は生理的状態では個体発生のほか,創傷治癒,卵巣および子宮内膜の性周期,胎盤形成などに限ってみられる.それ以外の成人の一般の血管内皮細胞で分裂しているのは10,000個に1個,0.01%であり,例えば腸管粘膜上皮細胞の14%が分裂期に入っていることを考えると4),血管新生がいかに正常成人組織では低く抑えられているかがわかる.血管新生は病理的にはがんのほか,慢性関節性リュウマチ,尋常性乾癬,加齢性黄斑変性,増殖性糖尿病性網膜症,未熟児網膜症などにおいて病因論的に重要な意味を持っている.従来,これらの病的血管新生過程にvas-culogenesisがどの程度貢献しているのかは明かではない.現在のところ,成体においてはan-giogenesis (以下,狭義の「血管新生」)を中心に考えられている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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