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シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Technology編
Denaturing Gradient Gel Electrophoresis
著者: 横崎恭之1 村上功1
所属機関: 1国立療養所広島病院内科・臨床研究室
ページ範囲:P.1171 - P.1177
文献購入ページに移動従来遺伝子の変化は疾患の直接の原因となる"変異"に興味が注がれてきたが,近年ゲノムには比較的高頻度に"多型"が存在することが明らかになってきており,注目を集めている.ポストゲノムプロジェクトを見据えて,ヒトの遺伝子のすべての多型を解析しようとする試みが製薬会社を含めたバイオ企業で既に開始されており,米国では一塩基多型(single nul-cleotide polymorphism;SNP)を集めたデータベースが構築,公開されている.遺伝子多型は,個人のいわゆる体質を規定しているものであり,例えば,アルデヒド脱水素酵素のGlu487Lys置換は日本人の半数近くにみられ,これを知ることにより急性アルコール中毒による死亡を回避することが可能である.一歩進めて臨床的にも,疾患の環境因子に対する感受性や疾患自体の個性,あるいは薬剤の副作用の出現などを事前に予測できる可能性がある.たばこの影響が比較的大きいと思われる健常者の集団,ある種の抗癌剤に感受性の高い癌組織などの予見が理論上期待でき,予防をも含めた効率よい医療の提供につながるため,これらの解析は政策医療上も重要な位置を占めてくるものと思われる.
ここで紹介する変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(denaturing gradient gel electrophoresis;DGGE)は,変異/多型を簡便に検出できる方法である.基本的には変性剤(ホルムアミドと尿素)の濃度勾配を持ったポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動法で,200~700塩基対程度の二本鎖DNA中の不定な位置に存在する点突然変異やSNP,また短い挿入や欠失などの小さな変異のスクリーニングに適している.従来このような変異の検出に汎用されてきた直接塩基配列決定法やPCR-SSCP法に較べても,使途によっては大きなアドバンテージがある方法である.本稿ではPCR-DGGE法の原理の概説,操作の実際について述べ,さらにわれわれの施設における臨床検体を用いた自験例について紹介する.
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