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文献詳細

雑誌文献

臨床検査43巻11号

1999年10月発行

文献概要

特集 臨床検査の新しい展開―環境保全への挑戦 Ⅱ.環境問題と疾病 7.化学物質の環境へのリスク

1)化学物質の安全性

著者: 中西準子1

所属機関: 1横浜国立大学環境科学研究センター

ページ範囲:P.1363 - P.1368

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安全性論議の前提条件
 化学物質の安全性を論ずる場合には,留意すべきいくつかのことがあるように思う.まず,そのことから述べてみたい.
 完全に安全な化学物質は存在しないことは,誰もが知っている.にもかかわらず,多くのところで化学物質の安全性が議論されている.ということは,安全性にはレベルがあることが前提になっていることを意味する.しかし,ある人々にとっては安全性にレベルがあることは自明であるが,他の人々にとっては,自明ではない.安全性にはレベルがあると考えている人々の中にも,そのレベルについての違いがある.しかも,安全という言葉の国語的な意味は,あくまでも絶対安全であるから,安全性にはレベルがあるということは,安全性の議論では常に隠されているという構造がある.また,その言葉の中には,よりレベルの高い安全性(より安全)のほうがよいという価値観も隠されている.仮に,化学物質の安全性にはレベルがあり,化学物質の安全性とは,実はそのレベルをどこに維持すべきかを議論することだと考えるなら,むしろ安全性という言葉は使わないほうがよいように思う.リスクは,安全の反意語のように受け止められているが,定義が明確で,科学的な議論に耐える.したがって,安全性の議論は,リスクという概念を取り入れて議論したほうがよい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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