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文献詳細

雑誌文献

臨床検査43巻11号

1999年10月発行

文献概要

特集 臨床検査の新しい展開―環境保全への挑戦 Ⅱ.環境問題と疾病 7.化学物質の環境へのリスク

3)環境エストロゲンと内分泌攪乱

著者: 山下成人1 及川伸二1 川西正祐1

所属機関: 1三重大学医学部衛生学教室

ページ範囲:P.1375 - P.1382

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はじめに
 21世紀の環境問題として環境エストロゲン(environmental estrogens)に強い関心が集まっている.環境エストロゲンとは,生体内のエストロゲン受容体と結合することなどによりエストロゲン様作用を示す化学物質のことであり,精子数の減少などの生殖障害をはじめ,さまざまな健康傷害との関連が疑われている.最近ではこのようなエストロゲン作用を持つ化学物質だけでなく,生体での種々のホルモン合成・貯蔵・分泌などの諸過程に影響を及ぼす外来性の物質を総称して内分泌攪乱化学物質(endocrine disrupting chemi-cals)と定義されているが,一般には環境ホルモンという用語が定着している.
 本来,生体に存在する内因性ホルモンは必要に応じて内分泌腺から分泌され,標的組織で細胞中のホルモン受容体を介して指令を出し,必要な蛋白質を合成させ生理作用を発現する.発生・成長および生体の維持活動に不可欠であるホルモン作用は極微量で起こりフィードバック機構などで微妙にコントロールされている.しかし,最近の研究により環境化学物質のビスフェノールA,ノニルフェノール,ポリ塩化ビフェニール(PCB)などがエストロゲン様作用を持ち,野生生物や実験動物に障害を及ぼすことが明らかになり,ヒトに対する影響も大きな問題になってきている.また,これらの物質が多くの河川や湖沼,海,さらには大気中からも検出され,地球規模での化学物質汚染が明らかになりつつある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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