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文献詳細

雑誌文献

臨床検査43巻11号

1999年10月発行

文献概要

特集 臨床検査の新しい展開―環境保全への挑戦 Ⅱ.環境問題と疾病 7.化学物質の環境へのリスク

5)環境汚染物質の分析―ダイオキシン類を中心に

著者: 宮田秀明1

所属機関: 1摂南大学薬学部食品衛生学

ページ範囲:P.1390 - P.1397

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ダイオキシン類測定の目的と意義
1.毒性評価と―日耐容摂取量
 ダイオキシン類は地球的規模で環境や人体の汚染をもたらし,現在の汚染レベルで人体に生体影響を及ぼす可能性が強く指摘されている超毒性の環境汚染物質である.しかも最近の研究により,ダイオキシン類のうち,最強毒性の2,3,7,8―四塩化ダイオキシン(2,3,7,8―TCDD)は,従来判断されていたよりも微量でラット,サルに精子数減少,免疫抑制,生殖器奇形,精神障害の胎児毒性,および成体のサルに子宮内膜症を起こすことが明らかになってきた(表1)1).例えば,これらの障害を起こす最小毒性量における母体や成体の蓄積濃度は,28,000~73,000pg/kg (1pgは1兆分の1g)にすぎない.このような体内蓄積濃度になる人体摂取量は,14~37pg/kg/日の超微量と推定されている.そのため,昨年5月,WHO (世界保健機関)は,ダイオキシン類の耐容一日摂取量(TDI)の基準値を10pgTEQ/kg/日から1~4pgTEQ/kg/日(TEQ:2,3,7,8―TCDD毒性等価量)に改正した.しかし,現在の先進諸国の曝露レベルである2~6pgTEQ/kg/日においても,検出し難い程度の影響が一般住民に既に起こっている可能性があるとしている.このため,WHOは,人体汚染の低減化を図るあらゆる努力を払うべきであると勧告している.
 これを受けて,わが国でもTDIが検討され,1999年6月,WHOに準じて10pgTEQ/kg/日から4pgTEQ/kg/日に基準値が改正された.現在,わが国における母乳保育による乳児の平均ダイオキシン類摂取量は,TDIの17~37倍も超過している2).さらに,高濃度者の体内蓄積量は,上記の胎児毒性や子宮内膜症をもたらす実験動物の蓄積濃度に近接している.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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