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文献詳細

雑誌文献

臨床検査43巻11号

1999年10月発行

文献概要

特集 臨床検査の新しい展開―環境保全への挑戦 Ⅱ.環境問題と疾病 9.環境と放射能

1)環境放射能(線)調査

著者: 出雲義朗1

所属機関: 1国立公衆衛生院放射線衛生学部

ページ範囲:P.1418 - P.1424

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はじめに
 1945年の原子爆弾投下直後に環境放射能調査も行われたが,いわゆる"環境放射能(汚染)調査"は,1954年にビキニ環礁で行われた大気圏内核爆発実験に始まる.この実験では,周辺海域で操業中の漁船が船体のみならず,乗組員および漁獲マグロとともに大量の放射性降下物(fall-out)により被曝して,人体の甚大な放射線障害を引き起こしている.また,食品衛生分野への放射能汚染問題や地球規模の広範な環境放射能汚染問題を新たに提起することになり,これを契機に大がかりな調査が開始されている.しかし,その後,米国やソ連による実験が頻繁に繰り返されるようになると(1960年までに232回1)),国内環境の放射能汚染が大きな社会不安を引き起こした.このため,1961年には内閣に放射能対策本部が初めて設置され,科学技術庁を中心に関係省庁,都道府県などによる環境放射能の調査や監視が強化されている.さらに,1980年までに幾度となく実験は繰り返された(191回1))が,以後同種の実験は行われていない.この間,国内では原子力発電所の稼動(1963年),原子力軍艦の入港(1954年),使用済み核燃料再処理施設の稼動(1975年),またチェルノブイリ原子力発電所の事故の発生(1986年)や旧ソ連・ロシアによる極東海域への大量放射性廃棄物投棄の公表(1993年)などを契機に,迅速,組織的,広範かつ定期的に放射能調査が行われ,その多くまたは一部は現在も継続されている.これら調査は,いずれにしても人為的に発生させた人工放射性核種に関する調査である.
 しかし,環境放射線による被曝1)(表1)の大部分は,宇宙線やそれによって生成されている放射性核種,放射能の物理的半減期(Tp)が非常に長いため地球創成以来(約46億年と推定されている)地上に残存し続けている核種やその崩壊生成核種などの"自然放射性核種"に起因する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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