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文献詳細

雑誌文献

臨床検査43巻9号

1999年09月発行

文献概要

今月の主題 生活習慣病 話題

栄養調査とバイオマーカー

著者: 𠮷池信男1

所属機関: 1国立健康・栄養研究所成人健康・栄養部

ページ範囲:P.995 - P.998

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1.栄養調査とは
 "栄養調査"とは,ヒトの栄養状態を総合的に評価する栄養評価システム(Nutritional Assess-ment System)の中核を成すものである1).食べ物や各種栄養素の摂取量を調べる"食事調査"とほぼ同義にとらえることもあるようだが,基本的には生体内での栄養状態の評価をも含む概念であると考えられる.
 現在,わが国の栄養問題としては,過剰栄養およびそれが大きな原因となっていると考えられる生活習慣病が中心的事柄である.しかし,地球レベルでは,エネルギーや各種栄養素の欠乏がいまだに最重要の問題である.この栄養素欠乏状態を例に取ると,栄義評価は表1のように整理される1,2).すなわち,第1段階では,食事調査により"何をどれだけ食べたか"を把握する.第2,3段階では,体内の貯蔵組織や体液・血液中の各種栄養素濃度を生化学検査などで測定する.第4段階では,体内での栄養素の欠乏が細胞や組織レベルで引き起こす機能低下の程度を評価する.ある栄養素に依存する酵素活性の低下などがその良い例である.一方,脂肪組織内に蓄えられる脂肪量の変化は,身体計測値の変化として検出され得る.第5段階は,"病気"の段階には達していないものの,個体として何らかの機能変化が生じている状態である.例えば,亜鉛欠乏による味覚低下,ビタミンA欠乏における暗順応の低下などは生理学的検査でとらえられるものである.最後の第6,7段階では,"病気"として,種々の症状,身体所見の変化が出現してくるものであり,臨床的に診断・評価が行われる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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