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文献詳細

雑誌文献

臨床検査44巻1号

2000年01月発行

文献概要

今月の主題 質量分析―新しい臨床検査への展開 話題

ESIMSによるHbA1c真値測定

著者: 中西豊文1

所属機関: 1大阪医科大学病態検査学

ページ範囲:P.75 - P.78

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1.はじめに
 糖化ヘモグロビン(HbA1c)は糖尿病診断,合併症の発現防止および中期血糖管理の指標物質として重要である.Diabetes Control & Complica-tions Trial (米国,1993年),厚生省糖尿病調査研究(1995年)の中で,HbA1cの具体的なコントロール目標値(7%)が掲げられ,その臨床的意義が高まるにつれて測定値の精度管理の重要性が増している.
 HbA1c測定は,高速液体クロマト法(HPLC)が大半を占めているが,測定法の正確性に問題があり,そのうえ,溶血性貧血,肝障害,腎障害,異常Hb症などを合併している症例では,測定値が血糖値を反映しない.また,ラテックス免疫凝集/凝集阻止法やアフィニティ法など測定原理の異なる測定法が,日常法に取り入れられ,さらに測定法の標準化,精度管理の難しさを増幅している.そこで現在,日本糖尿病学会,臨床化学会が中心になって標準的測定法の確立,HbA1c標品の作成など種々の精度管理が試みられている.国外では,1997年,Koboldら1) IFCCのHbA1c標準化委員会の作業グループは,正常β鎖N末端Valにグルコース1分子が結合した真のHbA1c成分(糖化ヘキサペプチド:Hex)を測定する方法として,Glu-C (グルタミン酸C末端切断)消化/エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESIMS)法を提唱し,この方法がdefinitivemethodとなるだろうと結論付けている.このように,限りなく真値に近い値を算出し得る標準的HbA1c測定法の確立に向けて世界的レベルでの作業が進められている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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