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オートファジー

著者: 大隅良典1

所属機関: 1岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所

ページ範囲:P.102 - P.104

 従来の分子生物学の研究は,遺伝子の発現制御,蛋白質の生合成の研究に集中してきた.確かにわれわれの体の中では何千何万という種類の蛋白質が巧妙に制御されながら合成されている.しかし合成されただけ分解されていることは忘れられがちである.つまり生体は絶え間ない合成と分解とのバランスの上に成り立っている.最近にわかに蛋白質の分解の研究が注目されるようになった.蛋白質の分解は従来,消極的な意味しか持たないと思われていたが,実は生体の制御機構として積極的で重要な役割を担っていることが明らかにされつつある.不可逆的な発生や分化の制御機構として,分解はむしろ適しているのかも知れない.
 蛋白質はそれぞれに固有の寿命を持っている.合成されると数分で壊されるものから,数十日も機能する分子までさまざまである.蛋白質の寿命が何によって決まっているかについてはいまだ謎である.蛋白質の寿命もまた遺伝子の中に書き込まれているに違いない.N末端の1アミノ酸が蛋白質の寿命を左右するといういわゆるN末端則は魅力的な仮説として登場したが,これで説明される部分はわずかで,依然として全容は明らかではない.

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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