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シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Application編
Parkinson病
著者: 近藤郁子1 山縣英久1
所属機関: 1愛媛大学医学部衛生学
ページ範囲:P.660 - P.664
文献購入ページに移動加齢とともに発症頻度の高まるパーキンソン病(Parkinsons disease;PD)患者は,わが国では人口10万人当たり100人と推定されている.PDの診断は患者の主な臨床症状である無動,安静時の振戦,歯車様固縮,姿勢反射障害と,L-Dopa治療への良好な反応を基に行われるが,疾患の進行とともにその他の神経症状を伴い,その他の類似疾患との鑑別診断が困難な場合もある.しかし,脳における病理変化は特有で,PDは中脳黒質のドパミン作動神経細胞の変性脱落を主病変とする神経変性疾患である.患者の90%は家族歴を持たない孤発例であることから,PDの原因として神経毒などの環境因子が多年にわたって研究されてきた.また,精神神経薬の投与によってもたらされる運動障害や精神障害などの薬物性PDの存在から,PDの遺伝性については否定的であった.しかし,残り約10%にごくまれであるが常染色体性優性遺伝を示す家系患者とか,常染色体性劣性遺伝を示す家系の者が存在し,浸透率の低い不規則な遺伝性を示す多因子遺伝性PDの患者もみられることから,PDの発症にはなんらかの遺伝子が関与することも推測されてきた.
現在,変異遺伝子を証明することのできる患者はごく少数に限られるが,最近5年間にいくつかのPD責任遺伝子が明らかになり,臨床医学の現場においても末梢血を用いたPDの遺伝子診断が可能となった(表1).そこで,本稿では遺伝子解析が可能なPDの責任遺伝子を紹介し,特にわが国で解明された常染色体性劣性型のPDにおけるparkin遺伝子の遺伝子診断法を概説し,遺伝子診断の有用性について述べてみたい.
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